東京拠点のポスト・ロック/エレクトロニカ4人組の2枚目のフル・アルバム。コンピュータによるエレクトロニック・ノイズと、ギター、フルート、ヴァイオリンといった生音を組み合わせ、透明感を漂わす女性ヴォーカルが乗る。6年前のファースト・アルバムはムームやシガー・ロスが引き合いに出されていたように、もう少しシューゲイザー/ポスト・ロック色が強かったと記憶しているが、本作ではさらに音数を絞り、空間を生かしたミニマムな楽器編成で、より余韻と響きを重視した静謐な感触に変化している。サウンド・プロダクションの完成度は相当に高く、アレンジな音色の選択も含め緻密な作りだが、重苦しい閉塞感はなく風通しがいいのは、同種のものに比べると、かなりヴォーカルの比重が高く、歌メロもポップだからだろう。言い換えると歌モノとしての自立性が高く、いわばヤング・マーブル・ジャイアンツを出自とするよなポスト・パンク~オルタネイティブのエレクトロニカ的展開という言い方もできる。少しハスキーで低いヴォーカルはなかなか魅力的で、美しいトラックとのバランスもとれている。秋の夜長にじっくり聞くには最適な、クールさと温かさが交じり合っているような絶妙な感覚がいい。ただし、歌詞はちょっと雰囲気に流れている感じで、もう少しひねりや鋭さがあれば、と思った。(小野島大)
(oscillator “夜音 [yoru-oto]“) ミュージック・マガジン [2009年10月号]