review

「聴こえなかったものがふと聴こえる、そんな瞬間の存在を感じさせる音楽」

少し前に、可聴域というものが、年齢が上がるにつれ低下する特性を生かした「音」に関する現象が、話題になった。若者にしか聞こえず、彼らが嫌悪感を覚える高周波のモスキート音を使えばたむろ防止も可能だというその話をニュースで聞いてからというもの、年齢差のみならず、可聴域には環境や想像力の違いも影響を及ぼすのではというアイデアが、脳裏を離れない。そもそも身体能力はある程度、鍛えれば磨かれ、使わなければ萎える。それが前提だが、聴覚はおそらく、環境と想像力が加味されればいかほどにも変幻自在だ-そんな仮定もあながち妄想ではないかもと、オシレータの新作を聴いて考えた。この4人組の音をシンプルに説明すると、フルートや鍵盤楽器などの生音と、コンピュータやノイズマシンによる電子音、そしてボーカルで織り成されたデジタル・アコースティック・サウンド。とはいえ本作は、音の強弱やノイズの差し込む場所や割合をはじめ、この人たちがあたり前にとらえる「音」の豊かさは自分の日常のそれとは違う、と実感できるほどの嬉しい刺激の宝庫だ。たとえば、「記憶素子」という曲。この曲ではアナログ・レコードの針飛びが日常音とともに響くような内容が、ふとした瞬間に新たな展開を見せていく。そんな「ふとした瞬間」が彼らの曲には多く、そしてあまりに自然ゆえ、そこに自分には聴こえない音が確かに存在している気さえしてくるのが興味深い。聴きこむといつか、聴こえてくるのかもしれない。(妹沢奈美)

(oscillator “夜音 [yoru-oto]”) SPA! 2009年9月15日号


interviews
雑誌ヒアホン(HEAR-PHONE) VOL.3 に ロングインタビュー、 『電子音響アンサンブルoscillatorがエレガントに繋いだ「自然」と「人工」 』が掲載 。
(oscillator “夜音 [yoru-oto]“) 雑誌ヒアホン(HEAR-PHONE) VOL.3


4人組エレクトロ・ミュージック・ユニットの約6年ぶりとなる新作。アーリー電子音楽を思わせるオーガニックな電子音と、清涼感のあるアコースティック・ギター、さらに鈴木真由美のヴォーカルが重なって、リリカルで透明感にあふれた世界を築いている。鈴木のポエトリー・リーディングと即興的な電子音のセッションというべき曲や、くすんだノイズとささやき系ヴォイスが奇妙な造形美を描く曲など、実験精神を随所に感じさせるところがおもしろい。雰囲気モノではない、エレクトロニカの今日的な進化形といえそうな力作(小山守)
(oscillator “夜音 [yoru-oto]“) CD Journal [2009年10月号]


田中誠を中心とするエレクトロニック・ミュージック・ユニットの約6年ぶりとなる新作。アーリー現代音楽を思わせるシンプルな電子音、ナチュラルなアコースティック・ギター、それに鈴木真由美のウィスパー・ヴォイスという取り合わせによる、美しく透明感に溢れた音宇宙。ノイズを強調した曲やピアノとボーカルだけの曲など変化にも富み、実験性を垣間見せているのがキモ。(小山)
(oscillator “夜音 [yoru-oto]“) indies issue [2009年10/11 vol.47 号]


96年に結成、メンバーチェンジを経て現在4人組で活動する電子音響バンド、オシレータ。生楽器と電子音の融合、というとまはや目新しくもないが、彼らの場合、より電子音寄りなスタンスを取りつつも、最終的にポップスとして楽曲を成立させているところが特徴。ボーカル、鈴木真由美のたおやかな歌声と歌詞、柔らかくも先鋭的なサウンドデザイン、楽曲内の独特な時間の流れが何とも心地よい。マスタリングは益子樹。(近藤)
(oscillator “夜音 [yoru-oto]“) CLUB JUICE [2009年9月号]


ROVOの益子樹も関与した2枚目のフル・アルバム。ピアノやヴァイオリン、ギターなどの生音に繊細な電子音を浮かばせたサウンドと、幻想的で存在感のある女性ヴォーカルが絡み合う。それは決してドラマティックなものではなく、日常の小さなドラマを耳で感じているかのような聴き心地だ。ausやAmetsubらエレクトロニカ勢、渚にてや羅針盤など歌モノ好きも気に入るはずの、エクスペリメンタルだがとてもポップな一枚。 (宮崎淳子)
(oscillator “夜音 [yoru-oto]“) TOWER RECORDS BOUNCE [2009年10月号]


目覚めと眠りの狭間の電子音、幻実を描くアコースティック・サウンド。益子樹マスタリング、WEATHERよりリリースという情報で、ASLNやオーガニックな音響ポップを想起するかもしれない。空間的な電子音響はその巧みさ故、メランコリックに流れるピアノやヴァイオリンら生楽器の美しい音色から受ける感触と等しい。それは繊細な女性ヴォーカルが映し出す淡いイメージと合い重なる。<エレクトロニカ><音響/ポスト~>などのキー・ワードで表すには不十分。絶妙なバランスで成り立つ、今語るべき純粋で良質な<ポップス>。 (水上渉)
(oscillator “夜音 [yoru-oto]”) TOWER RECORDS intoxicate [2009年vol.81]


「oscillator、6年ぶりの新作。益子樹のマスタリングの秀逸」

ヘビーなcubaseユーザーとして知られる田中誠を中心とした電子音楽ユニット、oscillator が約6年ぶりの2ndアルバムを9月16日に発表する。抽象音と生楽器をクロスオーバーさせ、女性ボーカルを載せたサウンドは初期ムームに通じる静謐さと音響的な美しさをたたえている。ミックスは田中が手掛け、マスタリング・エンジニアに益子樹氏を迎えることで自然な空気感を持った作品となった。
(oscillator “夜音 [yoru-oto]“) サウンド&レコーディング・マガジン [2009年10月号]


東京拠点のポスト・ロック/エレクトロニカ4人組の2枚目のフル・アルバム。コンピュータによるエレクトロニック・ノイズと、ギター、フルート、ヴァイオリンといった生音を組み合わせ、透明感を漂わす女性ヴォーカルが乗る。6年前のファースト・アルバムはムームやシガー・ロスが引き合いに出されていたように、もう少しシューゲイザー/ポスト・ロック色が強かったと記憶しているが、本作ではさらに音数を絞り、空間を生かしたミニマムな楽器編成で、より余韻と響きを重視した静謐な感触に変化している。サウンド・プロダクションの完成度は相当に高く、アレンジな音色の選択も含め緻密な作りだが、重苦しい閉塞感はなく風通しがいいのは、同種のものに比べると、かなりヴォーカルの比重が高く、歌メロもポップだからだろう。言い換えると歌モノとしての自立性が高く、いわばヤング・マーブル・ジャイアンツを出自とするよなポスト・パンク~オルタネイティブのエレクトロニカ的展開という言い方もできる。少しハスキーで低いヴォーカルはなかなか魅力的で、美しいトラックとのバランスもとれている。秋の夜長にじっくり聞くには最適な、クールさと温かさが交じり合っているような絶妙な感覚がいい。ただし、歌詞はちょっと雰囲気に流れている感じで、もう少しひねりや鋭さがあれば、と思った。(小野島大)
(oscillator “夜音 [yoru-oto]“) ミュージック・マガジン [2009年10月号]


生楽器とデジタルとを静かに混交させた音作りが6年前のファースト発売時にひっそりと話題を呼んだ4人組の久々に届いた新作。点を描くように音を鳴らしながら一つの線にしていくような手法で作られているが、最終的に浮き彫りになる歌とメロディは、ちょっと大貫妙子を思わせるような不思議な温もりに満ちている(岡村詩野)

(oscillator “夜音 [yoru-oto]“) ミュージック・マガジン [2009年10月号]