「完成系の手前にある”危うさ”が好きなので、常に半歩未完成な作品を作っていきたいですね」
■oscillatorとは直球なバンド名ですね?
僕はバンド結成時のオリジナル・メンバーでなないのですけど、 聴くところによるといわゆる”シンセのオシレータ”ではなく、 ”通信機で使われるキャリアを発生させるためのオシレータ”から 取った名前らしいです。単語自体の響きも良かったから選んだのでしょうね。
■田中さんが入る前はどんなバンドですか?
ストーン・ローゼスみたいなバンドでした。僕は1998年に加入したのですが、 それまでバンドが作っていたポップな構成の楽曲に対し、実験的なスタンス を持ち込んだと思います。ちなみに、今でこそエレクトロニカは流行っています けど、1998年当時はかなり厳しかったです。下北沢のライブ・ハウスに出たとき も、共演相手から変な目で見られたり(笑)。
■本作のタイトル『popularity』には、どんな意味が込められているのですか?
僕らのような音楽は、現状、一般的な大衆性とは距離を置いた位置にあると 思うのですが(笑)、そこに逆説的な意味をこめて”popularity”というタイトル を。それと、うちのコンセプトとして、”ポップな音楽をやる” というものが あるので。だから、””popularity” は “pop” の意味にも取れて良いかと。
■曲作りはどのように行っていくのですか?
幾つかのモジュール的な要素を組み合わせて、1つの楽曲を構成していくんです。 最初に電子的なノイズやリフ、メロディの”モジュール”があって、それらを 組み上げていく感じです。
■曲作りはメンバー全員で?
基本的な枠組みは僕とギターの佐藤(貴之)で作りますが、そこからは全員で アイデアを出し合っていきます。メンバーそれぞれの個性が相互作用して 面白い効果が出るんです。
■レコーディング機材はどういうものを?
実は、この作品は非常に制作スパンの長いもので、1999年から2001年にかけて 作られているんです。制作初期のころはAKAI PROFESSIONAL DPS12 と ROLAND VS-1680 を使っていました。
■オーディオ編集はそれらのHDRの中で?
しました。細かく切り貼りしてみたり、今考えると当時は大変でしたね(笑)。 制作の後半では、コンピュータを導入したので、視覚的にも作業が楽になりました けど。
■コンピュータは何を使用していますか?
PentiumIII/1G Hz の自作Windowsマシンです。ソフトは制作当時はsteinberg cubase vst で、最近は cubase-sx をを使っています。僕はもともと情報系の 研究をしていたので、Windows や UNIX ni非常になじみがあったんですよ。
■サンプラーは何を使用しているのですか?
本作ではいわゆるサンプラーは使っていないんですよ。生演奏したものをレコーダ に録って加工する・・・・・・。いわば録音した素材のアフター・プロセッシング です。それをサンプリングと判断するかは微妙ですね。
■フィールド・レコーディングもしていますね?
はい。公園とか街の雑踏の音とか。それから野外ではないのですけど、冷蔵庫の “ブーン”という低周波の音を使っている曲もあります。
■音源機材には何を使っていますか?
KORG Trinity Pro と CLAVIA Nord Moduler です。電子音に関しては、NATIVE INSTRUMENTS Reaktor 等のソフトウェアや佐藤が自作した機材を使っています。 自作機材では、例えば、電磁波を外部から拾って増幅する装置に、ディレイ機能 やゲルマニウム・ダイオードによる非線形歪みを付加したものなどを使いました。
■田中さん自身もよく機材を自作する?
いえ、僕はコンピュータがメインなので、ハード機材の自作はあまりしないです。 でも、壊れた機材とかは中を開けないと気が済まないですね(笑)。直す直さない は別として、中の基版を見るのが楽しくて。
■ズバリ本作の満足度はどのくらい
僕は完成されたものよりは、完成手前の”危うさ”が好きなんです。これからも 常に半歩未完成な作品を作り続けられればいいと思います。
(oscillator “popularity”)SOUND & RECORDING MAGAZINE [2003年4月号]