ふわっと小さな雪の粉が、天から舞い降り続けるさま。
その舞い降りた粉雪が、
まだ誰にも踏まれないまま、
夜の電燈の光に反射してきらきらと輝いているさま。
どんな舞台演出も、「自然」のそれにはかなわないと感じる瞬間。
「自然」という演出が何よりも本当に素晴らしいのは、
それがどこから始まってどこで終わるのかを、
誰にも告げず誰も知らないままに、
その最高の演出がいつもそっと始まって、
音も立てずに終わるところなのだと思っている。
本当に美しいものはやはり、潔い。
人間のエゴが介在した美しさが決して自然の美しさにかなわないのは、
そこにあるんじゃないだろうか。
そのように考えてゆくと、
いったい自分は何を生み出すことが可能で、
人間という縛られた前提のなかでいったい何を創りだすことができ、
何を表現したいと考えているのだろうと、改めて考える。
電子音という極めて非人間的で、非自然的な音が、
はからずも「自然」を切り取った瞬間を表現することに不思議な感覚を覚え、
それについて答えは出ていないけれども、
その行為に寄り添っていることに心地よさを覚えてから、
ずいぶんと時間が経ってしまった気がする。
まだ誰も踏んでいない、
いま降り積もったばかりのふわふわの雪の上を歩きながら、
そんなことを考えていた。
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